日本の財政破綻の問題について
(無利子永久国債)に価値は無い。
発行時点で引き受け側の中銀は以下のように仕訳を切らなければならない。
借方(無利子永久国債)A円 貸方(日銀券)A円
借方(強制低下損)A円 貸方(無利子永久国債)A円
リターン0円であることが発行時点で判明しているので、100%減価処理をしなければならない。価値0円の紙屑、偽札を発行するのがヘリコプターマネーの本質。
通貨発行権があるから破綻しない?
言葉がきつくなりますが、素人の浅知恵と言わざるを得ません。
どのような肩書を持った者が唱えた説であっても、間違っているものは間違っている。それを唱えている者は、複式簿記の基礎さえまともに理解していない。
「日本は財政金融政策の実験場なのか=佐々木融氏」(ロイター FX Forum | 2016年 08月 1日 19:07 JST http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-tohru-sasaki-idJPKCN10B0HZ)
こちらの方のコラムも併せてお読みください。
よく日本政府の保有している資産を以て、「貸借差額で見たときにこれだけあるから大丈夫」という論調を見聞きしますが、本当にそうでしょうか?
政府の保有資産のうち
現金化の困難なものは実質資産から除く必要があります。
例えば(貸付金)これは、返済期限を無視して繰り上げ返済を迫ることは貸し剥がしに相当するので、債務者が国家であった場合は国際社会での信用低下につながります。
次に(不動産)、インフラ整備でお金をかけた分、例えば
借方(不動産)A円 貸方(現金)A円
のように仕訳を切ることになり、複式簿記上の理屈から便宜上(不動産)資産として計上されますが、道路などのインフラは売れません。国有地ですが、誰に売るの?という話になるからです。国以外が保有すれば国道が私道になり、自由に万人が使える法的根拠を失います。
仮に使えるようにしてしまえば、逆に私有地にする意味が買い手側に無いし、買わない。
現金化が限りなく不可能に近いのです。
最も重要な点は、外国に不動産関係は売れないということです。安全保障上の問題が発生することは頭に留め置かなければならない。
金融資産についてはどうでしょうか、
債券や株式といった有価証券の類は、買い手はいるはずですが、それを政府が売るとなった場合、政府の財政事情を金融市場に疑われるのは想像に難くありません。
売り規模が大きければ需給関係から暴落を引き起こしますし、買い叩かれるでしょう。
資産価値は予め何割か減価を見積もっている必要があります。
次に日本の国債を引き受けてきた国内の資本事情を説明していきます。
日銀の資金循環統計(2016年3月末速報版)によると
預金を取り扱う金融機関・合同運用信託から
借方(貸出)740兆円 貸方(預金)1363兆円
借方(証券)420兆円 貸方(証券)100兆円
となり、貸借差額から、金融機関が賞味保有している現金は303兆円となります。
同様に保険・年金基金、その他金融機関の現金高は185兆円となります。併せて488兆円。
(※日銀の資金循環統計にある資産・負債では、その他の資産、負債・純資本が示されていません。しかし、本来ならばすべての資産、負債・純資本の計上された貸借対照表をもって現金高を導出することになります。現金や金融商品以外の資産を保有していないということは有り得ないし、純資本が無いことも有り得ません。
現金はあくまで「甘く見積もってこれだけある」と思ってください)
日本国債は日本の金融機関、生命保険会社、年金基金が主な買い手となってきました。
国債の入札は現金決済となります。
しかし金融機関も保険・年金基金も日々の営業支払いのために、現金の準備高を最低限は有していなければなりません。
従って国債の入札に使える国内の現金は上記の金額を下回ることになります。
国内のマクロ経済を複式簿記を通してマクロ財政として見たとき、理屈上は1000兆円ではまだ破綻しません。
ですがこのまま国債発行額を減らすことができずにいると、いずれ国内の現金では引き受けることが出来ない事態が確実にやってきます。
「資金循環(統計)上の債務超過」です。
その時にそれでも国債国内引き受けを強引に成立させるなら、日銀に直接引き受けさせる必要がでてきます。
発行側仕訳
借方(日銀券)A円 貸方(有利子国債)A円
引き受け側日銀仕訳
借方(有利子国債)A円 貸方(日銀券)A円
このとき国債の償還が終わっていない状態で、さらに国債を発行することになるので理屈上は、発行時点の(日銀券)をもとに引き受けることになります。
どういうことかというと、
資金循環統計でみる限り、現金高がマクロ財政下でゼロになっている状態は、すべての(貸付金)(有価証券)類と現金が貸借対応で紐づけされた状態であり、日銀が直接引き受けをする場合は、貸方に来る有利子国債の償還は、発行時点で市中に出すはずの(日銀券)で行われることが確定しています。
従って中銀側では以下のように振り替える理屈になります。
引き受け側日銀仕訳
借方(日銀券)A円 貸方(有利子国債)A円
発行時点で発行する(日銀券)を担保にその(日銀券)を発行する、「自分どうしで貸借対応している」ということになり、貸借差額で、発行額分だけ通貨価値が100%減価され、市中に何の価値もない紙屑が発行されることになります。発行時点で紙屑化していることが数理上証明されえます。
(無利子永久国債)であろうが、(有利子国債)であろうが、発行元である日銀が直接だろうと間接だろうと引き受ける行為は、発行される(日銀券)の価値が0円であることが証明されます。
国債を発行する必要が無いのなら、そうしなければいけません。
現在日本の量的緩和制度では、個人については貸金業法第十三条の二第2項で年収の3分の1を超えて借り入れることが禁止され(総量規制)、企業については大企業は内部留保によって資金需要が無く、事実上の上蓋となってマネタリーベースがキャッシュフロー化(流動性マネタリーベースと今後定義します)せずにいます。
中小零細企業については資金需要がありますが、借財を返せない状態で債務超過に陥り、営業回転資金用に新たに融資することは、金融機関には貸し倒れる危険を冒して融資することになり、場合によっては背任罪が考えられ困難を極めます。
バブル崩壊以降、銀行マンの何人が背任罪に問われたでしょう?
忘れないでください、「貸したくても貸せないときは、貸せないのです」。
金融機関が保有している預貯金は、すべて預貯金者から「預かっているだけ」で金融機関の自己資本ではありません。
石原元都知事肝いりで設立された新銀行東京のように、無理筋な融資でお金を毀損させてしまうわけにはいかないのです。
量的緩和でマネタリーベースがこれだけあってもインフレが起きていないのは、それが金融機関によって日銀の当座預金口座に留め置かれ、事実上の不胎化が行われているからです。
ですが、上記で説明したように、国内で国債引き受けができなくなり、それを日銀引き受けで強引に成立させたり、QEプログラムを通じた形であっても「資金循環上の債務超過」に陥ると、発行された通貨(日銀券)の紙屑化が始まります。
国家予算は流動性資本です。
1年以内にキャッシュフローとして市中に流れます。
そして支出には年金や、生活保護が含まれます。
65歳以上の人口は、人口の25%に達しており、年金財政は赤字で現在財源の9割は税金で賄っており、積立金は取り崩している状態です。
これら世帯が受け取った年金を貯蓄に回す余裕はほとんどありません。
消費性向は高くならざるを得ず、これら個人を通じて、流動性マネタリーベースの額は確実に拡大していきます。
通貨価値の希釈によって発生するインフレは「誰かにとっての費用が、誰かにとっての収益である」以上、支出・収入が同割合で増加していき、収益率が変わらず経済価値も財政価値もありません。
ところが流動性マネタリーベースが拡大すると、輸出・輸入を行う貿易関係の実需筋を通じて徐々に円売りが拡大していきます。
これも国債の直接引き受けをして財政ファイナンスを続ける限り、絶対に止まりません。
当然、FXで投機を行っている者たちも気付きます。
円売りがさらに拡大し、それを嫌った一般人からのキャピタルフライト(資産の外貨替え)も拡大し、悪性インフレを抑えることはできません。
そのとき、これをハイパーインフレーションではないと、
財政破綻はしていないと、
「まだ言い続けることが出来るでしょうか?」