経世済民戦線

財政出動や金融政策ではない、第3の経済政策を提案します(バナー広告が表記されますが当方とは無関係です。仮にDL表示があるバナーが出てきても無視を強く推奨します。)

所得税&法人税の2段階徴収制度(3)~雇用対策~

 (1)(2)では触れてませんでしたが、所得税法人税の2段階徴収制度で、仮に使用期限内に使用されずに税金として有期可処分所得が徴収された場合、それは

所得の再分配

に回します。

 バブル経済崩壊以降、非正規雇用人口はおよそ20倍の2000万人規模にまで膨れ上がり、正規雇用の数はなおも減少を続け、非正規雇用は拡大し続けています。

 原因ははっきりしていて、企業のコストの大部分を占める人件費の削減のためです。

 仮にどんな経済政策であったとしても、この巨大に膨れ上がった非正規雇用数が、短期間に一度に無くなるという事は、おそらく無いでしょう。

 景気の進展状況に合わせて、企業側は次期の採用数を決めるので、「内需が1年でGDPにして20%以上増えました」とかにならない限り、非正規→正規の大転換は急には起こりえないと、考えます。

 非正規雇用の問題は、賃金が低いのに、社会保険料を自己負担しなければならない事。及びその「賃金の上方硬直性(=コスト削減のための手段として非正規雇用を導入している企業にとって、賃金を上げる動機が薄い)」にあります。

 そこで、企業が非正規雇用から正規雇用に転換していくのに併せて、景気回復に伴うインフレに低所得者層が対応できるように、非正規雇用の賃金に、「所得の再分配」で賃金の補助を直接、労働者に対して行います。

 これは企業側のピンハネを防ぐために、労働者に対して直接行います。

 また、正規雇用への転換を促すため、派遣法を改定し、特殊技能(資格が無ければできない仕事、及び、高度な技能が無ければ仕事が成り立たない仕事)を持つ者に限定した派遣に改め、一般的な労働に従事する者の派遣を例外なく禁止し、違法とします。

 要はバブル期のそれにまで派遣法の中身を巻き戻します。

 

 また、雇用は所得税法人税の2段階徴収制度をもってしても、おそらくバブル期の水準まで正規雇用数が回復することはおそらく無いでしょう。

 これについては、事前に謝っておかなければなりません。

 現状では妙案がありません。

 対策を検討していて、方法が無いわけでは無いのですが、越えなければならないハードルが幾つかあり、試行錯誤の最中です。

 正規雇用数(賃金のバブル期水準の到達を伴う)の回復が、完全に達成できないだろうと考える理由は、1990年当時と2016年現在を比較して「生産能力の大幅な向上」が上げられます。

 当時と今で「何が最も決定的に違うか」というと、「IT革命」です。

 それによる生産能力の向上により、ハードやソフトを補助にして一人の人間がこなせる仕事量、ノルマが大幅に向上してしまったのです。

 結果、経費において固定費が相対的に下がって(変動費は一定です)、必ずしも正規雇用の増員で対処しなくても、単純作業を行う非正規雇用の増員で済むようになってしまったのです。

 多種多様な職種において、超過労働時間が増えたとはいえ、少数で仕事を回せるようになってしまったのです。

 生産性の向上が現在一部で盛んに叫ばれていますが、経済が成熟した社会においては生産性の向上は需要不足の状況で、生産能力に対して生産を抑える形になり、低下します。

 これ以上設備投資をして生産能力を増強しても、ハード(機会)やソフト(アプリケーション)に仕事を奪われ、労働市場における雇用の喪失を意味します。

 以前に有効需要のところで説明しましたが、物質的に満たされた人間の消費性向は、必ず低下します。

 「効用の限界」が問題になるからです。

 既に持っている同様の製品を、新しく買い直すという事は、そのために時間を使い、古いものをを処分する時間と手間、尚且つ買った製品の使い方を覚えなおす時間と手間が発生します。

 新しくものを買い直すことによって、満足を得るのと、時間を浪費しない事によって得られる満足を、天秤に掛けてどちらを取るのか?

 ただの小幅なマイナーアップなら、その都度、製品を買い直すという事は、普通の人間はしないでしょう。

 これが、年齢を重ねて高齢化していく人間においては、「脳の委縮」による思考力の低下、記憶力の低下が拍車をかけて、なおさら、年配になるほど、消費性向が低下していくのです。

 しかし、労働経験は年配の方が上の為、賃金は先進国においては、年配の方が高くなる傾向がどうしても出ます。

 つまり、経済が成熟していくとは何を指すのかと言うと、経済成長に伴い、「効用の限界」により物質的に満足した人間が増え、かつ消費市場における有効需要が減り続け、「世代間における所得の再分配機能」が確保されていないため、結果として経済成長段階において拡大した供給能力を、需要が割り込んで、不況と呼ばれる状況が恒常化していくのです。

 生産能力の向上は、費用対効果として企業の経費節減には繋がっても、有効需要には繋がりません。

 機械はお金を使わないからです。

 機械に賃金は支払いません。

 お金を使うのは人間であり、その人間がお金を稼ぐ仕事を奪われては、経済(マクロ経済におけるキャッシュフロー)が成立しなくなるのです。

 一部の知識人や政府関係者が、生産性の向上を叫ぶとき、単にイギリスで起きた蒸気機関発明によって起きた産業革命をそのまま意識していませんか?無意識に?

 

 ハード(機械)やソフト(アプリケーションに)よる生産能力や生産性の向上は、人々から仕事を奪わない形で達成されなくてはいけません。ワークシェアがされなくてはいけないのです。

 現状のままでは、正規雇用数は25年の間に進んだ生産能力向上のために、バブル期の水準を回復しない事が想定されます。賃金水準を維持するため、既に正規雇用で働いている人達の既得権益を維持するために、ある一定水準で正規雇用数は伸び悩むことになるでしょう。

 これを人口拡大政策による消費市場の参加者の拡大で、解決してはいけません。

 土地と資源は有限だからです。

 人口の多寡に依存しない対処策が必要なのです。

 

 今考えているのは、生産性を企業ごとに数値化して偏差を導き出し、税率を設定して税として徴収し、労働者に再分配するという方法ですが、ハードルが幾つかあって、構想段階です。