所得税&法人税の2段階徴収制度(2)
さて、所得税&法人税の2段階徴収制度のひな形については、以上のようになるわけであるが、この制度を通して消費性向を上げるだけでは、実はまだ経済にとっては不十分である。
この記事では今まで省みられることの無かった、日本の公的年金制度の問題点に触れたい。
問題点というのは、福祉政策視点のそれではない。
経済視点だ。
日本の公的年金の財政方式は、積立方式と賦課方式の折衷方式になっている。
積立方式というのは、事前に国が制度加入者からお金を積み立て、将来、受給年齢に達したときに、支払う方式である。賦課方式というのは現役世代が納税したお金を原資に受給世代を支える方式である。
さて現在の法律上、公的年金制度の財源は最終的に半分を税金で賄う方式で、半分は積立金で賄う事になっている。
問題なのは、積立部分だ。
積み立てられたお金は、受給世代に支給されるまでお金が、使われない状態になっていた。(そして財源が危機だからといって、なぜか運用するための機関を設立して投資に回された)
以前に「有効需要(2)」の記事で述べたが、投資の本質は、供給能力(供給量)の増大であって、有効需要の創出ではない。
投資とはなんなのかその本質も考えずに、企業に投資を促すのは、BtoBとBtoCでは投資費用の回収経路が異なるという事も踏まえてない、奇論・愚論なのである。
公的年金を運用しているGPIFとは、サラリーマンや自営業者の加入する厚生年金・国民年金に与り運用する機関である。
その資産構成で解るように140兆円ほどある。
もとは全額現金だったが、現在は運用利回りを狙って株式や国債を買って、出た利益を足りない財源に充てているということになっている。つまり資産構成を見る限りは現金はほぼ無いといっていい。(株式については、持っている買い板枚数が巨大過ぎて、反対売買して現金確定益を出したことがほとんどないのではないか?という疑いを私は持っている。この運用についての疑問点については別稿に機会を設ける予定である。)
140兆円、という金額が、需要側ではなく供給側に投下され、有効需要創出の機会を無意味に逸失してしまった、という事が見逃してはならない経済視点での問題点である。
この金額が、完全賦課方式の下で受給に使う分だけ徴収されていれば、消費者の購買力がここまで減ることは無かった、実質家計収入が消費意欲がここまで減ることは無かったはずなのである。
よく考えてみてほしい、サラリーマンの厚生年金で月額6万円(企業・個人の折半)、自営業者・非正規労働者で月額1万5千円が徴収されているのである。
そして、需要創出能力の無い「投資」に回されてしまっているのだ。
提案したいのは、公的年金制度の完全賦課方式の導入と、所得税&法人税の2段階徴収制度の、両頭制。
完全賦課方式では、将来貰える年金が横並びになるのでは?という懸念があるだろう。
心配は無用。
マイナンバー制度により所得は完全に把握されることになる。
将来の年金受給金額は、生活に必要な基本金(ベース)の支給と、現役時代に稼いだ生涯賃金(=経済貢献度)に応じて慰労金を支給する、2階建て方式を採用します。
(※慰労金の方は一応上限があります。青天井では財政もたないからね)
完全賦課方式にして、貯蓄性向・消費性向を税の2段階徴収制度でコントロールし、消費市場において有効需要を爆発させるのである。
超新星爆発を。
お金に使用期限を設け、好景気を永続させ、非正規雇用を使わなければ利益構造を維持できなかった企業経営者の心配を無くすることで、非正規雇用問題を解決し、お金をキャッシュストック(貯蓄)ではなく、キュッシュフロー(絶対安定した収入)で保有する、という提案です。
経済学では、お金に使用期限を設ける、という発想を何故か研究者の方々はしてこなかった。
だが、貨幣経済以前の物々交換経済では、衣・食・住のうち、食の消費期限のために、物々交換は使用期限が有ったはずなのだ。
食を財の交換手段として見た時、消費期限が過ぎて腐ってしまえば、労働によって産生されたはずの付加価値は喪失し、無に帰したはずなのである。(この点についての考証は、財の価値を追跡できる複式簿記の考えを用いて別稿に記事を設けたい)
なお末尾になるが、消費税については8%据え置きか、引き下げるか、それとも増税するかについては、景気改善により2段階徴収制度導入で減った直接税収入分をどれだけ補えるか、またそれを超えて行けるかを見て、将来の調整課題とします。
現時点で消費増税は反対です。
(増税で政治家や官僚に使わせるより、消費者個人個人に消費させた方が経済効果・財政効果はあると考えます。不必要な助成金、公共事業費も減らせます。草花に水をやるならジョウロで上からあまねく撒く方がいい。)
以上。